When You’re Kalopsia

音楽の話をします。

近年最もお気に入りのバンド 〔Whitney〕

 今日は、近年私が1番のお気に入りのバンドについてお話ししたいと思います。このバンドの音楽は、全天候型でいつでもどこでも聴ける暖かい包容力のあるもので、2016年に発表された1stをほぼ毎日聴いているかもしれないです。時に寄り添い、時に慰め、時に励ましてくれる音楽なので、きっと誰かの支えにもなることができると思うので、是非紹介したいのです。

 

 アメリカは、シカゴをベースに活動する、Whitney(ホイットニー)です。

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上の写真はライブメンバーも含めたもので、正式なメンバーは中央に立っているこの2人です。

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左から、Max Kakacek(Gt),
Julien Ehrlich(Vo/Dr)
の2人です。

 

 マックスは、2014年に解散したインディロックバンド、Smith Westerns(スミス・ウエスタンズ)の元メンバーで、こちらのバンドでもギターを担当していました。

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このバンド自体も、Domino Recordsからレコードを何枚か出していて、めちゃくちゃカッコいいので聴いてみてください。ちなみに、3人組のバンドで、マックス以外の2人は日系人のオオモリ兄弟で、兄のカレン・オオモリは最近ソロで活動を開始しました。

 

 一方、ジュリアンの方は、Smith Westernsでもドラムを叩いていましたが、今やそこそこビッグネームなニュージーランド発のバンド、Unknown Mortal Orchestra(アンノウン・モータル・オーケストラ)(以下UMO)の初期のサポートドラマーとしても、活動していました。

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 UMOも私のお気に入りで、去年発表された4thアルバムSex&Foodはアルバムオブザイヤーな一枚です。めちゃくちゃカッコいいサイケでソウルな唯一無二のサウンドで、またピックアップしたいと思います。因みに、ジュリアンもインスタグラムで2018年1番お気に入りな曲として、UMOの4thに収録された「Honeybee」を挙げていて、私も大好きな曲で、ギターで弾くと気持ちいいです。

 

 そんな2人が、バンドから離れ、さらに恋人との失恋で傷心していた時に、オンボロアパートの一室でルームシェアを始めます。

 当時のシカゴは真冬の極寒で、もはやホームレス同然の生活で、外出するのもままならず、音楽家が同居しているので、当然2人でソングライティングを始め(というかそれしかやることがなかった?笑)、バンドを結成するというのは自然な成り行きですね。

 

 シカゴの音楽シーンは年齢など関係無く、割とフランクな世界らしく、伝説的エモバンド、American Footballのマイクキンセラの兄弟であるティムキンセラ率いるJoan of Arkのメンバーである、ボビー・バーグからオープンリールのレコーダーを譲り受け、デモを作っていったそう。(わざと回りくどく書いてみました)

  そして、2015年よりライブ活動を開始し、Tobias Jesso Jr(トバイアス・ジェッソ・Jr)オープニングアクトを務めたことがきっかけで、Foxygen(フォキシジェン)Jonathan Rado(ジョナサン・ラドー)と出会います。彼は、Whitneyの1stアルバムである「Light Upon the Lake」をプロデューサーを務める人物で、近年数多くの良作のプロデューサーも務めており、「ラドーファミリー」も今度ピックアップしたいと思います。彼がプロデュースした、トバイアスのレコードもほんとにハートウォーミングで最高です。ほんとに良作だらけなのです。

 

  ようやくWhitneyの音楽に触れていきますが、彼らは自身の音楽を、「カントリーソウル」と銘打ち、聴いてみると確かにフォーキーでソウルフルで、今までになかったものにも思えます。約半世紀前のオールドスクールな音楽に、確実に半世紀分のエッセンスが組み込まれており、新しく聴こえるのです。

 曲のメロディやコード展開はマックスが考えるそうなんですが、そのメロディがまさに「至極」。センチメンタルでメランコリックなメロディなら狙って作ることもできるかもしれないんですが、彼の凄いところは、アレンジ力だと思います。彼の考えるギターやキーボードのフレーズは、シンプルで飾らなく、暖かく、心に沁み行ってきます。

 そんな美しいメロディに、ジュリアンの繊細で優しいファルセットボイスが乗ることで、Whitneyのシグネチャサウンドになります。彼の折れそうなほどに繊細な声で歌われるセンチメンタルな歌詞が、ストレス社会に生きる私のような人間の投影となり、支えになるのです。

 ジョナサンのエンジニアリングも素晴らしく、一つ一つの楽器の音はエフェクトをかけすぎず、シンプルにしあげており、肉体的で真っ向勝負です。楽器はオーソドックスなバンドセットに、ヴィンテージエレピとトランペットと、比較的シンプルめな構成ですが、Whitneyは技術的にも高いものがあり、アンサンブルがとても美しいのです。また、トランペットが入ることにより、カーティスメイフィールドの名盤、「There’s No Place Like America Today」を彷彿とさせる控えめな壮大さや哀愁、温かみが感じとれます。

 ヴォーカルのミックスがまたツボで、ダブルトラッキングにより、ソロの頃のジョンレノンのような感覚で、つまりはこの半世紀の(僕個人的な)素晴らしい音楽をシンプルにまとめてくれたアルバムなのです。

 

 上に貼った「No Woman」は最初のシングル曲でWhitneyらしさが詰まった曲です。タイトルからも2人の始まりのエピソードを想起させますよね。ちなみに、Whitneyというバンド名は、ジュリアンが小学生の頃に恋をして振られた女の子の名前らしいです。メンバーはドラマのゴシップガール好きというだけあって、ちょっとOL的な女々しさもあるのかも。笑

  次に紹介したいのが、「Dave's Song」です。

 うねるベースラインとマックスの美しいアルペジオが絡みながら始まるこの曲。最初から最後に向かうまでの構成がとても綺麗で、途中のスライドギターもカントリーチックで印象的です。Daveというのは作曲時にアパートの下の階に住んでいた、気の合うクレイジーなジャンキーの名前とのこと。

 次に紹介する曲は、「Polly」。

 センチメンタルな雰囲気から始まり、最後には希望に溢れたサウンドに背中を押されます。

 MVのアニメーションは日本人アーティストのSarina Niheiが手がけたとのことで、Whitney結成のきっかけを表現しているようですね。脱力系なタッチの絵で癒されます。

 最後に紹介するのが、1stの中でも最も大好きな曲「Follow」です。

 アルバムの最後の曲順にふさわしい曲で、アルバムを通して聴いた最後には、心の中でも色んな感情が大円団になるはず。帰宅時や寝る前など、一日の締めには欠かせない曲です。

 動画は山の中での演奏ですが、これがまた最高なのです。是非ご覧ください。

 

 長文にお付き合いいただきありがとうございました。とにかくこのバンドへの愛情は感じていただけたかと思います。笑

 ちなみに1stアルバムの他には、1stアルバムのデモアルバムと、ヴィンテージソウルの隠れた名曲のカバーが2曲収録されたシングルが発表されています。そして待望の2ndは現在製作中で、年内にはリリース予定とのこと。夏フェスへの出演も決まっており、来日も期待できます。ライブはまだ一度もみたことがないので、切実に来て欲しいです。。。

 ほんとに素晴らしいバンドで、ピッチフォークなどでも高い評価を受けているので、知っていたかたもいるかもしれませんが、知らなかったかたには是非ハマっていただきたいです。

 

それでは。